錦光山和雄の「粟田焼&京薩摩」Blog

京都粟田窯元で「京薩摩」の最大の窯元であった錦光山宗兵衛の孫によ

多治見の陶器師・高木典利先生のおもてなしの流儀:The way of Mr.Takagi's hospitality

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    ©平正窯 高木典利

 

  多治見市市之倉の陶器師で近代陶磁器研究家の高木典利先生の平正窯(ひらまさがま)にお伺いしました。

 

  平正窯  多治見市市之倉

  Hiramasa Kiln     Tajimi   Ichinokura

 

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 平正窯をお伺いしまして驚いたことは、展示内容が昨年お伺いした時とは様変わりになっていたことでした。

 Mr. Takagi Noritoshi

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 何気なく座敷の奥にまいりますと、色とりどりの作品が並んでいるではありませんか。わたくしは吸い寄せられるように座り込んで、じっくり拝見させていただくことにしました。

 それらの作品は、作品名とともに詩的なネーミングがついておりました。

 

  大根画花瓶「大地の恵み」    高木典利

        Vase with radish design underglazed  "The blessing of the earth"

  Takagi Noritoshi

 

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       ©平正窯 高木典利

 

  紫陽花画花瓶「雨を待つ」 高木典利

  Vase with hydrangea underglazed    Takagi Noritoshi

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         ©平正窯 高木典利

     

  深雪画花瓶「東北の旅」  高木典利

  Vase with deep snow " The journey of North-East Japan"  Takagi Noritoshi

     

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     ©平正窯 高木典利

 

  ガラス瓶画花瓶「何も言わぬ」 高木典利

  Vase with glass bottle design " Silence"   Takagi Noritoshi

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    ©平正窯 高木典利

 

       「道すがら」  高木典利

       "Along road"     Takagi Noritoshi

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    ©平正窯 高木典利

 

 わたくしが、「大地の恵み」とネーミングされた花瓶を眺めておりますと、なぜか大根が顔を出している土に触ってみたくなり、指先でふれてみますと、ざらざらした土の感触があるのです。

 土だけでなく、そこには高木先生が大切にしている世界があるように思われます。首回りのブルーの青空、胴回りの薄緑の風のそよぐ野辺。それが釉下彩の柔らかく包み込むような、グラデーションによって融け合い、境界線のない世界を作り上げています。

 

 高木先生にお聞きしますと、これらの作品は地元多治見の西浦焼も含めまして、先生が長年研究されたこられた釉下彩技法に、新しく鉱彩技法を加味された新案意匠のようであります。

 

 高木先生のこれらの作品は、自然と共生する人々の営みをほのぼのと描いており、とても斬新でモダンな意匠ではないでしょうか。

 この釉下彩技法を現代に蘇らせた高木先生のこれらの作品は「高木典利作陶展」として近くのJAギャラリー市之倉で来年3月末まで開催されるそうであります。

 

 高木典利作陶展ポスター

 The postar of  Mr.Takagi Noritoshi's Exhibition

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 高木先生が二階でコーヒーを淹れましょうと仰られて、わたくしが少し遅れ二階にまいりますと、驚いたことに雨戸を全部締め切った、暗闇のなかに蝋燭の灯りがいくつか揺らいでいるのです。

 まさに谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」の世界なのです。

  

  The candle light in the darkness

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 その暗闇の雰囲気のなかで、高木先生は西浦家の蔵にあったというミルでゆっくりとコーヒー豆を挽いて、コーヒーを淹れておられます。

 

    Otemae of coffee by Mr.Takagi  in the darkness

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 そして驚いたことに、

 なんと、なんと、なんと、コーヒーカップとソーサーが富士山の意匠の西浦焼なのです。そしてクッキーの皿は、西浦焼とほぼ同時期に釉下彩の飲食器を海外に輸出しておりました、わたくしの祖父・七代錦光山宗兵衛の盟友である京都清水の松風嘉定(しょうふうかじょう)の皿なのです。

 

  Cup&saucer with  Mt.Fuji design underglazed           Nishiura Wear

 Dish  with Mt.Fuji design  underglazed                       Shoufuu Kajyou

 

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 西浦家ゆかりのミルでコーヒーを挽いていただき、西浦焼と松風嘉定の器に淹れていただいたコーヒーの味は忘れることのできないものとなりました。まさに陶磁器の器の醍醐味と言えましょう。

 

 The coffee mill of Nishiura Family

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 そのあと、お昼の食事に行くことになり、高木先生は「陶都創造館」まで車を飛ばして、ヤマカ製陶所のディナーセットの展示を案内してくださいました。そして「陶都創造館」の真向かいにある老舗料亭「松正」に入りました。

 

 陶都創造館 ヤマカ製陶所ディナーセット

 Dinner set of  Yamaka

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       ©陶都創造館

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 そして料理が運ばれてまいりますと、

なんと、先ほど見学したヤマカ製陶所のディナーセットで食事ができる趣向になっているのでした。

 

 The lunch  by the dish  of OLd  Yamaka Kiln

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 食事しながら高木先生にお伺いした話では、先生が瀬戸市美術館の服部文孝館長とともに創設された「近代国際陶磁研究会」は、イギリス訪問の際に美濃の志野焼の話をしましたところ、その外人が「local wear」と言ったそうで、日本国内と海外では認識に大きな差があることを痛感、「近代国際陶磁研究会」の設立を思い立ったとのことでした。

 またわたくしが「明治の陶磁器は本当に再評価される日が来るのでしょうか」とお聞きしましたところ、そうした兆候がかなり出て来ていると力強いお言葉をいただき、意を強くいたしました。

 

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 こうして里帰りしたヤマカの器で多治見名物の五平餅をいただきながら、貴重なお話を伺い、楽しい時間を過ごすことができました。

 

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 そのあと、「多治見市美濃焼ミュージアム」に車で連れて行っていただき、織部志野焼を見学し、「美濃焼ミュージアム」の岩井館長様に”へいげもの”の古田織部が亡くなったあと、小堀遠州の綺麗さびに美濃焼の趣向が一挙に変わってしまったこと、昭和5年に荒川豊蔵可児市志野焼の陶片を発見して以来、発掘ブームが巻き起こり主な窯跡が掘りつくされてしまったことなどのお話を伺い、最後に西浦焼の展示を見学することができました。

 

  西浦焼    

  Nishiura wear

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  ©多治見市美濃焼ミュージアム

 

 そして最後に高木先生が尽力された「西浦記念館」を訪問いたしました。

 開館は、明治13年6月29日に明治天皇が巡幸で西浦家に宿泊された日を記念して2020年の6月29日に開館する運びとなっていましたが、高木先生の計らいで開館三日前に見学できることになりました。

 

       西浦記念館

      Nishiura Memorial Museum

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「西浦記念館」は西浦家の蔵を改造して記念館にしたそうですが、驚いたことに前庭から板張りの床、畳のある部屋の壁にいたるまで、高木先生が三カ月がかりで作られたそうで、その精力的な取り組みにはただただ頭が下がります。

 

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 かくて高木先生のゆかりの陶磁器を拝見させていただき、いたれりつくせりの”おもてなし”はとても印象的で、生涯忘れることのできないものとなりました。また折々に伺ったお話も大変貴重なもので、ただただ感激いたしまして言葉もありません。

 高木先生、本当にどうもありがとうございました。

 お心遣いの数々心より感謝申し上げます。

 

 なお、多治見では陶工たちが窯の炎で消耗した体力を回復させるために、鰻をよく食べたそうですが、鰻屋さんが開いておらず、残念ながら食べることできませんでした。たまたま入った居酒屋さんで何がお勧めかと聞いたところ馬刺しというので食べてみました。次回鰻重を食べる機会があれば食べたいと思います。

 

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横山美術館「京焼ーその技が歴史をつくる」展拝観記:Yokoyama Art Museum"Kyoto wear"

 錦光山宗兵衛Ⅶ 透彫朝顔図花瓶

Kinkozan Sobe  Vase with morning glory

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    ©横山美術館

 

 名古屋の「横山美術館」の「京焼ーその技が歴史をつくる」展を見てきました。

 

 多治見の平正窯(ひらまさがま)の陶器師で近代陶磁器研究家の高木典利先生が「素晴らしい展示内容で、コロナウィルスの影響で休館を余儀なくされていたのはもったいなかった」と仰っておられていましたので、期待に胸を膨らませてまいりますと、なんと鈴木館長様が瀟洒な横山美術館様の入り口でお出迎えしてくれまして、その心遣いに驚きました。感謝、感激のスタートです。

 

 

 鈴木館長様はお忙しいにもかかわらず、一緒に回ってくださり、「これはシャーク・スキンというのです」、「これは陶芸にお詳しい方なら大変な技術ということがわかります」と解説までしていただき、大いに恐縮いたしましたが、わたくしにとりまして大変勉強になりました。

 

 盛上風景図花瓶  錦光山宗兵衛Ⅶ

 Vase with landscape design Moriage   Kinkozan sobeⅦ

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     ©横山美術館

 

 さて今回の「京焼ーその技が歴史をつくる」展は、

 

錦光山宗兵衛帯山与兵衛(素晴らしい色彩感覚と写実的な絵付け)、諏訪蘇山(ダイナミックな透彫葡萄図花瓶など)、乾山伝七、清風与平、松風嘉定、伊東陶山京都市陶磁器試験場(宗兵衛や松風嘉定、藤江永孝らの苦心の結晶)など誠に盛り沢山でしたが、わたくしといたしましては、やはり30数点に及ぶ、錦光山宗兵衛作品の充実ぶりに目をみはらされました。数だけでなく、錦光山宗兵衛の多彩な作品を展示しており、まさに高木典利先生が褒めていたことが納得できる思いでした。

 

 錦光山宗兵衛作品としましては、すでにNHKの日曜美術館アートシーンで紹介されておりました雅で気品のある「上絵金彩花蝶図花瓶」、「上絵花尽花瓶」、アールヌーヴォー様式の傑作の一つである「盛上網文葡萄図花瓶」の素晴らしさはいうまでもないことですが、ここでは今回初見の宗兵衛作品のなかでわたしが感激しました何点かについて触れさせていただきたいと思います。

 

 錦光山宗兵衛 上絵金彩花蝶図花瓶

 Kinkozan Sobe Vase with flower&butterfly overglazed with gold

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     ©横山美術館

 

 盛上網文葡萄図花瓶   錦光山宗兵衛Ⅶ

 Vase with mesh&vine design Moiage   Kinkozan SobeⅦ

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    ©横山美術館

 

 

 一つは「陽刻釉下彩草花図花瓶」であります。

 宗兵衛は多種多彩な作品をつくっておりますが、この作品は、ネムノキの葉のやわらかさと淡い紅色の花を浮き彫りにした「陽刻」の釉下彩の作品であり、わたしはこうした宗兵衛作品は初見であり、貴重な作品ではないかと思われました。

 

 陽刻釉下彩草花図花瓶  錦光山宗兵衛Ⅶ

 Convex carved vase with flower&grass underglazed Kinkozan sobeⅦ

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      ©横山美術館

 

 二つ目は「透彫朝顔図花瓶」であります。

 白や紫の朝顔の花の上に葉が乗り、さらにその葉の上に朝顔の花が乗るという具合に幾重に重なり合った透かし彫りのこの作品は、1900年のパリ万博後の作品と思われます。 

 

 透彫朝顔図花瓶   錦光山宗兵衛Ⅶ

           Kinkozan Sobe

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   ©横山美術館

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  ©横山美術館

 

 すでにわたくしのこのブログのなかでご紹介していますように、1900年のパリ万博でアールヌーヴォー様式に衝撃を受けた錦光山宗兵衛は帰国後わずか2年後の明治36年(1903)の第五回内国勧業博覧会でおそらく本邦初のアールヌーヴォー様式の「棕梠葉切透」、「桐花葵切透」を出品し、翌明治37年(1904)のセントルイス万博でも「剛拳」、「梅切透」などの透かし彫り作品を出品しております。

 

 今回、宗兵衛の「透彫朝顔図花瓶」の隣に諏訪蘇山の「透彫葡萄図花瓶」が置かれておりますが、葡萄の実があまりに美味しそうで摘まんで食べたくなってしまいます。

 初代諏訪蘇山は当時錦光山商店の改良方顧問をしておりましたので、諏訪蘇山は宗兵衛とともにアールヌーヴォー様式の透かし彫り作品を盛んに制作していたものと思われます。ただ、わたくしが実見しました宗兵衛のアールヌーヴォー様式の透かし彫り作品は、オックスフォード大学アシュモレアン博物館の「色絵菊花文透彫花瓶」の2点のみであり、横山美術館様のこの作品は貴重なものではないかと思われます。

 

 透彫葡萄図花瓶   諏訪蘇山

 Open-work vase with vine design   Suwa Sozan

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     ©横山美術館

 

 

 三つ目は「上絵金彩武者図花瓶」です。横山美術館様の学芸員の原様のお話では、窓絵のなかの出陣する武者絵もさることながら首回りの「割文様」と脇絵の細密で精緻な美しさにも注目してほしいとのことでした。わたくしも初めて、割文様という細部に至るまで細密で精緻な文様がほどこされていることに驚きました。

 

 上絵金彩武者図花瓶   錦光山宗兵衛Ⅶ

 Vase with warrior design overglazed with gold kinkozan SobeⅦ

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   ©横山美術館

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  ©横山美術館

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  ©横山美術館

 

 さらに「上絵金彩花図デミタスセット」です。カップもソーサーもとても上品な絵付がなされており、このデミタスカップでコーヒーを飲んだらさぞかし美味しいだろうと思われますが、このセットはケース付きで展示されており、極めて貴重なものといえましょう。

 

 上絵金彩花図デミタスセット  錦光山宗兵衛Ⅶ

 Demitasse set         Kinkozan SobeⅦ

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 ©横山美術館

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       ©横山美術館

 

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   ©横山美術館

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   ©横山美術館

 

  最後に、上絵金彩花蝶図花瓶やカップ&ソーサーがいくつか展示されており、その精緻で華麗な意匠には思わず息を飲みました。

 

  上絵金彩花蝶図花瓶   錦光山宗兵衛

 Vase with flower&butterfly desiqn,overglszed with gold    kinkozan SobeⅦ

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  ©横山美術館

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 なお横山美術館様の4階のコーナーにビデオ映像が流れているのですが、そのなかでわたくしが拙著「京都粟田焼窯元 錦光山宗兵衛伝」のなかで使いたかったのですが、その写真がどこに所蔵のものか失念してしまい使えなかった、錦光山商店の白亜の建物の画像があり、学芸員の原様の丁寧な資料収集に感謝したいと思います。

 

  錦光山商店 白亜の建物  Kinkozan's house

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 鈴木館長様および原様とはお昼の食事をご一緒させていただき、「瀬戸や多治見では良質な陶土があったので陶磁器が発展した」、「多治見から名古屋に陶磁器を馬で運ぶときに、途中に内津(うつつ)峠という難所があり、次の荷馬車を待って、2頭の馬で峠を超えた」、「名古屋の東区には260程の絵付け工場があり、京都からも200名の絵師が来ていた」など大変貴重なお話を伺うことができました。

   名古屋東区エリア

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 ©名古屋陶磁器会館

 

 さらには「名古屋陶磁器会館」にもご案内いただき、金彩を使わず黄色を使う「名古屋薩摩」や「POTTERY CLUB」、さらにはガラス盛り技法である「コレラン」や凸盛り(でこもり)技法の作品などを拝見することができました。

 

  名古屋陶磁器会館  Nagoya Ceramics Hall 

 

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 名古屋薩摩

  Nagoya Satsuma

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  ©名古屋陶磁器会館

 

 コレラン技法の花瓶

 

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  ©名古屋陶磁器会館

 

 最後に鈴木館長様をはじめ学芸員の原様など横山美術館様にいろいろとお心遣いをいただきまして、心より感謝を申し上げたいと思います。

 どうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

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西川満と葉石濤:日台を結ぶ浪漫的な絆

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 昨年の2019年4月23日、わたしは台南の街にいた。

 翌日、わたしの恩師西川潤先生のお父様の西川満氏の著作が収蔵されている真理大学の「台湾文学資料館」を訪問する予定になっていたのである。

 その日、わたしは朝タクシーで「安平古堡」に向かい、次いで西川満氏の幻想的な小説「赤嵌記(せつかんき)」の舞台となった赤嵌楼を見て、台南の街を地図を片手に歩きはじめた。気温は33度くらいあっただろうか、わたしは強い日差しを避けるように歩き続けた。

 明末の台湾の国民的英雄である鄭成功の記念館「延平郡王祠」を見学し、緑したたる公園の隣にある「孔子廟」を巡り、朱色の門のそばに近づいていくと紅の花が咲いているのに気がついた。それは五月にならないと見れないのではないかと半ばあきらめていた、燃えるような鳳凰木の花であった。

 

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 わたしは鳳凰木の花を見れたことで心躍らせながら通りを歩いていくと、「葉石濤文学記念館」という標識があった。「葉石濤、誰だろう?」と思いながら、吸い寄せられるように近づいていくと、赤レンガ造りの瀟洒な建物があった。

 

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 好奇心に駆られて中に入っていくと、葉石濤氏関連の資料が展示されている。葉石濤氏という人物は、どうやら台湾の代表的な作家らしい。二階に上がっていくと、驚いたことに西川満氏の著作の装丁が窓に貼られているではないか。さらによく見ていくと、西川満氏の葉石濤氏宛ての手紙も展示されている。

 葉石濤氏は台湾の川端康成と称されているようだが、西川満氏と一体どのような関係があったのだろうか。まったくわからない。ただ偶然とはいえ、西川満氏と縁のある作家、葉石濤氏の記念館を訪れるとは、なにか見えない縁に導かれているような気がしてならなかった。

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 翌日、わたしは電車に乗り隆田駅で下りてタクシーで麻豆区にある真理大学に向かった。驚いたことにキャンパスには学生の姿がなく、たまたま通りかかった人に尋ねるとあの建物だと教えてくれ、張良澤先生にお会いすることができた。

 張良澤先生に西川満氏と葉石濤氏とはどんな関係だったのかとお尋ねすると、葉石濤氏は台湾時代の西川満氏のお弟子さんであったとおっしゃる。

 葉石濤氏は台南中学のころから文学少年で、西川満氏が文芸講演会で台南に来るとよく質問をし、西川満氏が主宰する「文藝台湾」に作品を投稿し掲載されたという。台南中学を卒業すると、台北に出て、西川満氏の「文藝台湾」の編集助手をして手伝った間柄というのである。

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 その後、わたしは台湾から帰国したが、葉石濤氏の小説はどんな作品で、どのような人生を歩まれたのか、ずっと気にかかっていた。

 今年、コロナウィルス禍で自粛するなかで、葉石濤氏の文献をいろいろ探してみると、昭和18年(1943)に葉石濤氏が19歳のときに「文藝台湾」に投稿し掲載された日本語の小説「林からの手紙」と「春怨ー我が師に」があることがわかり、取り寄せて読んでみた。

 「 林からの手紙」という作品は、著者自らがフランスのドーデの「風車小屋より」の中の一篇を下敷きにして書いた小説ということだが、概要は以下のようだった。

 

 ある日、私のところへ友人の林から手紙がくる。その手紙には、幼いころに林は両親を亡くし府城の伯父に養育されているが、祖父と妹の春娘が龍崎庄というところでつつましく寂しい生活を送っている。五年程会っていないので会いに行くつもりであったが、どうしても行けない用事ができたので、すまないが君が代わりに行ってくれないかと書かれていた。私は林の妹の春娘と祖父の生活に興味を感じて、強い日差しの蒸し暑い日に、麦わら帽子をかぶり自転車に乗って山手の龍崎庄にむかう。マンゴーの林を抜けて、小路を辿っていくと、一見支那風の二階屋の前に出た。私が来意を告げると、十七八の青い長衫を着た、聡明そうな娘が出てきた。春娘であった。春娘と祖父に林について知っていることを伝えると、春娘は私を二階に連れていくことになる。そのシーンは次のように描写されている。

 

 春娘が娘らしい羞恥を仄かに顔にただよわせながら、さあと言う如く顔を私に向けて誘った。胸のわくわくする事を禁じえなく眼を窓外にそらした。春娘は裾を軽くひるがえしながら窓をしめた。燕のような軽々とした優雅な仕草であった。階段を上がる時彼女は私を先にしようとしたので私はまたこの娘がつつしみ深い事を知った。何分窓を閉めているので顔の表情は見られなかったが、その足音で春娘は真っ赤な耳たぶをしているのではないかとも考えられた。

 

 二階でわたしは兄に食べさせるはずであったマンゴーの砂糖づけをご馳走になり、夕食をともにして泊めてもらって翌日帰るという、淡い初恋のようなものを題材とした短編小説である。

 

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 次に「春怨ー我が師に」であるが、この小説は主人公の私が従妹の春英と些細なことで言い争った翌日、詩人の西村氏に誘われて、二人は気まずい気持ちを抱えたまま雲林の樟里氏の家を訪れるのである。樟里氏の庭園を巡り、薔薇などの草花に思いを凝らし、また書斎にある数多くの蔵書に心を奪われ、何気なく手にしたジイドの「狭き門」を見て、二人のこじれた気持ちがほぐれていくという若い男女の微妙な心理がたくみに描かれた作品である。

 この作品に西村という名前で登場してくる人物は西川満氏をモデルしており、その描写が的確で面白い。

 私と詩人の西村氏と従妹の春英が三月の終りに雲林へ行くということになったのは全くの偶然のことだった。

 この島の美を歌い情緒を歌い風俗と神秘とを歌った高踏派の詩人として有名な西村氏には、淡々とした詩情に満ちた「雲林記」なるスケッチ風の小説がある。

 この亭の中で幾度、私と春英は声をそろえて氏の詩に惑溺し、素晴らしい章句をよみ、もの憂い午さがりを送ったことであろう。

 西村氏は世人が詩人はかくあるべきだと定義づけた容姿を持っていた。氏自身は詩人らしい風をするのは気障で月並だと思って避けよう避けようとしているらしいがそれが、結局底にある詩人らしい気質を露出させることになり常識家の世人には詩人らしい容姿だと思わすに至るのである。氏にはフランス風の明るい機知とか気質とかがそなわっているようだ。

 それに比べると西村氏はその作品を思わせる花やかさの中にも何処とはなしに強さをひそめている。

 「やあ季節外れの珍しい雨ですよ。西村さんのいらっしゃったせいかも知れませんね。雲林は鬼門だから」「いや雨の日の姿を雲林は見せようというのでせう」西村氏は白皙の顔をほころばした。

 西村氏は笑いながら私たちの顔をみつめて、「じゃ喧嘩などしないで仲良く帰りたまえ。台北にでも一緒に来ることがあったら、遠慮なく訪ねて来なさい」と言った。

 

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 この葉石濤氏の二つの小説は、日本の植民地である台湾が舞台なっていて、戦争のまっただなかにもかかわらず、戦時色が微塵も描かれてないという意見もあるようだが、十八九の若さでこれだけの浪漫的な小説を書けることは並みではないといえるであろう。

 師の西川満氏は耽美的、浪漫主義的詩人・作家であり、リアリズム文学を掲げて「台湾文学」を主宰した張文環氏とは文学的に対立したといわれているので、この時、西川満氏と葉石濤氏は浪漫主義的な文学で結ばれていたといえるのではなかろうか。

 だが葉石濤氏の人生は日本の敗戦とともに一変してしまうという。

 いましばらくわたしは西川満氏と葉石濤氏を追う旅を続けてみようと思う。

 

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 ©錦光山和雄AllRightsReserved

 

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横山美術館の「京焼」展・講演会中止のお知らせ

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  ©横山美術館

 

 5月17日に予定されておりました、横山美術館さまの「京焼ーその技が歴史をつくる」展の講演会「世界に雄飛した京焼・京薩摩ーその魅力を探る」が、新型コロナウイルスの影響で残念ではございますが、中止されることとあいなりました。

 

 皆様のご声援ならびにご期待に応えられずに、忸怩たる思いでございますが、緊急事態宣言が出されている折柄でもあり、誠に申し訳ございませんが、ご高配のほどよろしくお願い申し上げます。

 

 横山美術館さまは、講演希望者の方も多く、新型コロナウイルスが終息し、機会があれば、講演会の開催も再度検討される意向のようでございますが、コロナの終息次第にかかっている状況には変わりございません。

 

 わたくしも最近、特大マスクを購入いたしましたが、大変な状況が続いておりますので、皆様もくれぐれもご自愛くださいますようお願い申し上げます。

 

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©錦光山和雄AllRightsReserved

 

#横山美術館 #京焼 #京薩摩 

横山美術館「京焼」展の開催期間が7月19日まで延期されます:Yokoyama’s exhibition"Kyoto-ware" extended

     上絵金彩花蝶図花瓶  錦光山宗兵衛

 Vase with flower&butterfly design,overglazed with gold   Kinkozan Sobee

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    ©横山美術館

 

  冒頭の画像は横山美術館さまの企画展「京焼ーその技が歴史をつくる」展に展示されている錦光山宗兵衛の「上絵金彩花蝶図花瓶」です。

 

 この作品の頸部の桜花を模した両耳の間の深緑色は、なんと凛とした深味のある色かとこころ打たれます。

 さらに胴部にかけてグラデーションを施しながら明るい黄色へと移ろい、器面には楚々とした桜花があしらわれ、蛾のような不思議な蝶が舞っています。なんと春の陽光に溢れた空間なのでしょうか。夢幻の世界に誘われたような気がいたします。

 また口縁や頸部の付け根、肩、足部などに施された割文様も、どこかエキゾチックで迷宮の幻想的な世界に迷い込んだような気にさせられます。

 

 ご記憶の方も多いと思いますが、4月12日(日)のNHK日曜美術館Eテレ)のアートシーンで、横山美術館さまの「京焼ーその技が歴史をつくる」展が紹介され、錦光山宗兵衛作品も上記の「上絵金彩花蝶図花瓶」のほか「盛上網文葡萄図花瓶」、「上絵花尽図花瓶」の3作品が数分間でしたが紹介されました。

(4月12日をお見逃しの方は4月19日(日)午後8時からEテレ日曜美術館の再放送があり、8時45分からアートシーンが放映される予定ですのでご覧いただきたいと思います。『注』わたしの勘違いで4月19日夜8時から日曜美術館で本編の「法隆寺金堂壁画」は再放送されましたが、8時45分からのアートシーンは更新されておりまして、お詫びして訂正させていただきたいと思います。どうも申し訳ございませんでした)。

 

 横山美術館「京焼ーその技が歴史をつくる」展の展示風景(Ⅰ)

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  ©横山美術館

 

  NHK日曜美術館のアートシーンをご覧いただきました方からは、錦光山宗兵衛の作

 品につきまして、

  ・色使いがとてもモダンですね  ・さすが素晴らしいですね

  ・NHKの名番組に紹介されましたこと心からお祝い申し上げます

        ・素敵ですね、本物見てみたいですね

 

 などと過分なお言葉をいただきました。この場をお借りいたしまして厚く御礼申し上げます。

 

 残念ながらコロナウイルスの影響もありまして、わたしは上記の作品を実際にはまだ見ておりません。

 横山美術館さまの美しい展示風景写真を見ておりますと、早く実見したいと思いますが、横山美術館さまは現在臨時休館で臨時休館の期間も4月20日から5月11日(月)まで延長されております。

 

 横山美術館「京焼ーその技が歴史をつくる」展の展示風景(Ⅱ)

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  ©横山美術館

 

 まさに現在、美術・芸術および美術館と憎きコロナウイルスとの戦いが続いているわけですが、

 万が一にも実見することができなくなったらどうしようと心配しておりました矢先、

ひとつの朗報が飛び込んで参りました。

 横山美術館さまが「京焼ーその技が歴史をつくる」展の開催期間を6月14日から7月19日(日)まで延期される決定をなされたのです。誠に有難いことであります。

 

 下の写真は、錦光山宗兵衛の「上絵金彩花鳥図花瓶」(左)と帯山与兵衛の「上絵金

花鳥図花瓶」(右)です。錦光山宗兵衛の花瓶は、牡丹、木蓮、海棠などが描かれた

吉祥画題の「雀 玉棠冨貴(ぎょくどうふうき)之模様」であります。また帯山与兵衛

の花瓶は花の周りを飛ぶ鳥が描かれており、その透明感のある青がとても印象的であり

ます。

 

 錦光山宗兵衛(左) 帯山与兵衛(右) 「上絵金彩花鳥図花瓶」

 Kinkozan Soee(Left) Taizan Yohee(Right) Vase with flower&bird

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  ©横山美術館

 

 わたしは美術・芸術というものは人間の想像力を育み、知恵を生む源泉になると信じ

ております。願わくは、人間が知恵を結集いたしまして、一日も早く、未曾有の敵・新

コロナウイルスを撃退することを祈ってやみません。

 

  ©錦光山和雄AllRighsReserved

 

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横山美術館「京焼」展がNHK日曜美術館「アートシーン」で紹介予定

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  ©横山美術館 錦光山宗兵衛「盛上網文葡萄図花瓶」

  Kinkozan SobeeⅦ Vase with mesh and vine design,Moriage

 

 来週4月12日(日)、NHK(Eテレ)日曜美術館の「アートシーン」にて

名古屋の横山美術館様の「京焼ーその技が歴史をつくる」展の下記の内容などが紹介

される予定です(内容変更の可能性もあります)。

 

 その概要といたしましては、 

 ・横山美術館様が近代京焼の展覧会を開催していること

 ・高級陶磁器であった京焼が明治維新で購買層を失い、海外市場に目を向けたこと

 ・京都の匠の雅やかさに西洋風の感覚を加え、海外で高い評価を得たこと

 ・欧米の好みを分析し、アールヌーヴォー様式を採り入れたこと

 ・開催日程の紹介 

   という予定になっているようです。

 

  紹介される作品としましては、

 ①冒頭の画像の錦光山宗兵衛「盛上網文葡萄図花瓶」

 ②錦光山宗兵衛「上絵金彩花蝶図花瓶」

 ③錦光山宗兵衛「上絵花尽図花瓶」

 ④帯山与兵衛「上絵金彩花鳥図花瓶」など4点

 ⑤諏訪蘇山「透彫葡萄図花瓶」 

 という予定になっているようです

 

 横山美術館様から送っていただいた「京焼ーその技が歴史をつくる」展の図録を見て

みますと、いずれも素晴らしいもので、今から放映されるのが楽しみでなりません。

 

 新型コロナウイルスの影響で外出を自粛されている方が多いという時節柄でもござい

ますので、皆様、ご興味があり、ご都合がよろしければ是非ともご覧いただきたいと存

ます。よろしくお願いいたします。

 

 ©錦光山和雄AllRightsReserved

 

 

 

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