名古屋の横山美術館で、その精巧さと華麗さで世界を驚かせた「SATSUMA」の選りすぐり作品が一堂に展示されています「魅了する 煌めく薩摩」展が開催されています(2019年6月1日~10月31日)。
本薩摩、京薩摩、東京薩摩、横浜薩摩、加賀薩摩、産地不詳の薩摩焼と展示されておりますが、ここでは京薩摩の錦光山宗兵衛作品に焦点をあてさせていただきます。
錦光山宗兵衛の作品としましては、まず最初にアール・ヌーヴォー様式の「盛上網文葡萄図花瓶」です。
日本で錦光山宗兵衛のアール・ヌーヴォー様式の作品で、横山美術館のこの作品ほど、鮮やかな色彩で葡萄が瑞々しく描かれ、その上に細やかな盛上技法で網目が施され、また上下に施された淡い色合いの装飾が落ち着いた上品さを添えている作品は少ないのではないでしょうか。七代錦光山宗兵衛の西洋向けの意匠改革に尽力した一端が垣間見える作品かと思われます。
Kinkozan Sobei(7)
Vase with mesh and vine design,Moriage H(61.2cm) W(27.6cm)
次は上絵金彩雉図花瓶(一対)です。
わたしの拙作「京都粟田焼窯元錦光山宗兵衛伝」の中で葵航太郎氏の論文を引用して詳しく書いてありますが、この作品には、明治42年に商標登録された「ROYAL NISHIKI NIPPON」印が記載されているとのことで、わたしはこの印を実見したことが少なくその意味では珍しい作品といえるかと思います。ただ最高級品の「錦光山造」に比べると絵付けや金彩が淡泊になっているように思わます。
kinkozan Sobei(7)
Vase with pheasant
次は「上絵金彩人物図花瓶」です。
あまりの過剰感のある存在感に圧倒されて、七代錦光山宗兵衛の孫であるわたしでも少し腰が引けてしまいますが、それでもよく見ると、解説文にあるようにブルーの色彩が鮮烈であり、また本金なのでしょうか、レリーフ状の金彩および武者絵の金彩の煌めきには息を飲む思いです。
メッキ感が少ないところを見ると、水金(すいきん)ではなく、本金かもしれません。本金であれば、これだけ多量の本金を使って作品を作ることはどの窯元でも出来るものではないでしょう。また本金は水に溶かすこともできずに扱いが非常に難しいにもかかわらずこれだけの絵付けができるとはやはり超絶技巧といえるのではないでしょうか。
kinkozan Sobei (7)
Vase with human design, overglazed with gold
The second half of the19c to the first half of 20c
次は「上絵金彩人物図飾壺」です。
この作品は上記の「上絵金彩人物図花瓶」に比べて、金彩でもあるにもかかわらず墨絵のような枯淡の雰囲気のある作品です。鳥かごをのぞきこむ唐子、鶴の群れ、松の木、本金かどうかわかりませんが、やはり松の葉を丹念に繊細に描く錦光山の絵師の技量は並みのものではなく、卓越しているといえるのではないでしょうか。
多治見の「平正窯」の陶器師で、「近代国際陶磁研究会」創立者で近代陶磁の再評価に20年以上尽力されてこられた高木典利先生が「錦光山ほど多種多様な陶磁器をつくってきた窯元ない」とおっしゃられいましたが、その一端を示す作品ではないでしょうか。
今回の横山美術館の「煌めく薩摩」展では、京薩摩を下記にありますように丁寧に解説しているほか、本薩摩をはじめ、宮川香山の逸品やこれまであまり知られていなかった、ほのぼのとした味わいで思わず微笑んでしまう「隅田焼」にひかりを当てるなどとても充実した展示内容となっておりました。
同館学芸員の原久仁子様に帰りがけご挨拶をさせていただきましたが、同館所蔵の錦光山作品は今回展示された以外にもあるそうで、いつの日か「錦光山宗兵衛展」が企画されことを切に願ってやみません。
Kinkozan Sobei (7)
Lidded pot with human design, overglazed with gold
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