錦光山和雄の「粟田焼&京薩摩」Blog

京都粟田窯元で「京薩摩」の最大の窯元であった錦光山宗兵衛の孫によ

拙著「粟田、色絵恋模様」装幀の苦心談

花蝶図大鉢 七代錦光山宗兵衛 京都国立近代美術館 画像提供:清水三年坂美術館

 拙著『粟田、色絵恋模様 京都粟田焼窯元 錦光山宗兵衛外伝』の装幀ができあがってまいりました。今回は拙著の内容に触れずに、僭越ながらカバーの装幀の苦心談を書かせていただきたいと思います。

 まず最初に考えたましたのが、祖父・七代錦光山宗兵衛の「花蝶図大鉢」をカバーの表紙の真ん中に持ってくることでした。なぜかと申しますと、原あゆみさんが大学院の修士論文で「花蝶図大鉢」を研究されて、わたしもその華麗な美しさを再認識したからです。

 次に考えたのが、表紙に「花蝶図大鉢」を据えた場合に題字を横にするか縦にするかということでした。

 下の画像をご覧になっていただきますと分かりますように、題字を横にすると、「花蝶図大鉢」が一段と引き立つのですが、困ったことに「花蝶図大鉢」の美しさが勝って、わたしの小説の方が負けてしまい、あたかもカタログ本のような印象になってしまうのです。

 

 

 そこで祖父には申し訳ないのですが、下の画像のように、題字を縦にして、恋模様の「様」が「花蝶図大鉢」の一部に掛るようにして、この本は小説なのですと主張してもらうことにしました。

 

 

 次に問題となったのは、カバーの地の色といいますか、「花蝶図大鉢」の背景の色をどうするかということでした。最初のカバーの地の色は、「花蝶図大鉢」の原画像の背景の色そのものの灰色っぽい色でしたが、何度か試しても、なかなか納得できる色にたどりつけませんでした。

 そこで考えましたのが、曾祖父の六代錦光山宗兵衛が開発した典型的な「京薩摩」は、瑠璃地金彩のなかに窓を開け、そこに花鳥図や人物図などを描くというものでしたので、その瑠璃色を使ったらどうかということであります。ただ瑠璃色といっても「日本の傳統色」などに掲っています瑠璃色はかなり明るい青色であり、宗兵衛の「京薩摩」の色とは相当かけ離れた色なのです。

 わたしは困ってしまい、編集者を通して、デザイナーさんに、シンガポールの錦光山コレクターのFu Yunpengさんの下のような画像を送って、「このカップの取手の青」の色にしてほしいと頼んでもらいました。その色を何色かと一言でいうのはなかなか難しかったので、わたしは勝手に「宗兵衛ブルー」とネーミングして「宗兵衛ブルー」に極力近づけてほしいとお願いしたのです。

 

 

 それに応えてデザイナーさんが送ってくれたのが下の2つの画像です。上の画像が「取手の色」で、下の画像が「取手の色ー青強め」です。

 この2つを見比べたときに、上の「取手の色」の方は深みのある上品な濃紺で素晴らしいのですが、完璧な色ゆえどこか逃げ場がない暗さ、重さを感じました。

 下の「取手の色ー青強め」の方は青の色がやや薄く軽やかな感じがしました。

 

①取手の色

②取手の色―青強め

  ただ「宗兵衛ブルー」と名付けた以上、どちらが「宗兵衛ブルー」に近いのだろうかと考えました。①「取手の色」は深みのあるブルーで「宗兵衛ブルー」に近いような気がするのですが、どこか重苦しい。そして②「取手の色―青強め」は軽やかで逃げ場がありますが「宗兵衛ブルー」とは少し違うのではないか。

 三日三晩悩みました。

 そこでデザイナーさんに①「取手の色」の深いブルーを残しながら、左上方の「恋」と「色」の題字辺りにむけて、②「取手の色―青強め」のようにブルーの色を薄めていくグラデーションにしてもらえないだろうかとお願いしました。それで出来上がったの下の画像の③「宗兵衛ブルー」なのです。

 ①②③とも微妙な違いなので見分けが難しいかもしれませんが、③「宗兵衛ブルー」が「花蝶図大鉢」の陰翳のある濃いブルーから左上方にむけて、まるで天からうっすらと光がさしてくるようにグラデーションがかかっていることが分かっていただけるでしょうか。分かっていただけたら、とても嬉しく思います。

 

③「宗兵衛ブルー」版

 もっとも、最終的には表紙カバーの題字の『粟田、色絵恋模様 京都粟田焼窯元 錦光山宗兵衛外伝』のうち、「色」と「恋」は現在、白抜きですが、この2文字は銀箔押しとし、他の文字は金箔押しとしますので、実際の本は画像とはかなり違った印象になると思われます。どんな仕上がりになるのか大いに楽しみであります。

 なお表紙をめくった次のページを別丁扉というそうですが、デザイナーさんがつくってくれたのが下の画像です。画像では分かりにくいのですが、背景の色が粟田焼の素地の色である玉子色に近くてわたしは気に入ったのですが、編集者が通常別丁扉を多色のカラーにするものはないと言うので、単色のものにすることにしました。その意味で下の画像は実際には登場することのない幻の別丁扉と言えましょう。

 

幻の別丁扉

 

 縷々述べてまいりましたが、拙著が出来上がり(12月18日刊行予定が2023年1月12日に延期となりましたのでよろしくお願いいたします)、皆さまにも手に取っていただき、どのような感想をもたれるのか大変興味が湧いてまいります。ご意見をよせていただけましたらとても有難く存じます。皆さまよろしくお願い申し上げます。次回は本の内容について触れさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 

「追記」

 拙著の装幀の苦心談をお話しましたが、その後、実際に紙に印刷した色見本が届きました。それを見て感じたのは、「恋」、「色」にかけての「宗兵衛ブルー」のグラデーションが画像ほどはっきりしていないこと、および「宗兵衛ブルー」が思ったよりも紫がかっていることでした。ただ帯をしないで表紙カバーを見ると、「花蝶図大鉢」の下部に陰翳の濃いグラデーションが見事でした。皆さまも是非カバーをはずして手に取ってご覧になっていただきたいと思います。

 色見本の題字は、「恋」と「色」が銀箔押し、その他の題字が金箔押しなのですが、前回の「錦光山宗兵衛伝」の時には金箔は特別料金を払って村田金箔艶消しNo.105を使ったのですが、それを使うと完全受注生産品で使用が非常に困難という話でしたので、今回の金箔は村田金箔艶消しNo.111を使うことにしました。その分、キラキラ感が強い感じがいたします。銀箔は艶消しのNo.24を使用したとのことでした。

 カバーをはずした表紙は、白地に赤茶けた題字でとてもシンプルで潔い感じのものに仕上がり、また別丁扉は、凹凸のある横線模様の「OKミューズラフィーネC(クリーム)」を使い真珠のような光沢があり、色も単色ながら粟田焼の素地の玉子色に近く、気に入った仕上がりとなりました。蛇足ながらご報告させていただきます。

 

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