最近、私は明治のおんなたちを描いたものを執筆したこともこれあり、失われてい
く明治の時代を惜しみ、市井の人々の暮らし、とりわけ女性のささやかな生活の何気な
い情景を描いた鏑木清方(1878~1972)の代表作〈築地明石町〉〈新富町〉〈浜町河
岸〉の「三部作」が展示されている「幻の《築地明石町》特別展」を見て来ました。
まず〈築地明石町〉ですが、ひとりの美しい夫人が、青地の小紋に黒い羽織をはお
り、胸の前で両袖を閉じ、袖口から金の指輪をした左手の指を見せながら、右の方に顔
を向けた姿が描かれています。髪型はイギリス巻というらしく昔、外国人居留地のあっ
た築地らしい雰囲気を漂わせています。よく見ると、その女性の背後には朝霧にかすむ
帆船のマストがまぼろしのように描かれ、佇む脇には黄色く病葉になった葉もある朝顔
が描かれており、季節は盛夏からうつろっていることが知れます(驚いたことに、下記の
写真にありますように黄色い病葉のある朝顔?を最近発見、そうだとしますと季節は秋
と推察されます)。
紅を塗った口もと、楚々としてどこか寂しそうな眼差しをしたこの夫人は、儚げでい
て、またどこか凛としたものを感じさせる不思議な雰囲気を漂わせています。日本でお
なじみの振り返るポーズをとっており、この名作は「日本のモナリザ」と言ってよいの
かもしれません。それにしましても、この謎の夫人はどのような想いで佇み、その背後
にどのような物語が秘められているのか想像を駆り立て、気がかりになります。
鏑木清方 〈築地明石町〉
日本のモナリザ !?
Tsukiji Akashi-cho Town of Kaburaki Kiyokata
Japanese Mona Lisa !?
朝顔?
〈新富町〉は新富芸者が新富座の前で傘をさす横向きの姿を描き、〈浜町河岸〉は舞
のお稽古を終えてうつむき加減で帰る町娘を描いています。遠くてよくわからないで
すが、枯れ柳が描かれているようで季節は初冬のようであり、隅田川にかかる大橋もか
すむように描かれています。
三部作は描かれている女性の年齢も、また季節も異なるようですが、そこには今は失
われてしまった古き良き時代、Good old daysがまごうかたなく描き留められているよ
うに思われました。さすが神田生まれで、市井に生きる人々の日々の何気ない哀歓を知
り尽くした鏑木清方だけのことはあります。季節の移ろいと市井の人々のささやかな生
活に目をむけた鏑木清方のやさしい眼差しが胸を打ちます。
鏑木清方 〈隅田河舟遊〉
Boating Excursion on the Sumida River by Kaburaki Kiyokata
○©錦光山和雄allrightsreserved
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