錦光山和雄の「粟田焼&京薩摩」Blog

京都粟田窯元で「京薩摩」の最大の窯元であった錦光山宗兵衛の孫によ

いのちの豊穣さを寿ぐ翁の舞:NOH "OKINA " CELEBRATING DANCE BY OLD MAN

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 能の”翁”は能にして能にあらずといわれていますが、

 ”翁”の舞のはじまりは、

 翁がしずしずとすり足で舞台正面に進み出て深々と一礼すると、舞台右手の笛座前におかれた面の入った面箱のまえに座してはじまります。

 そして突如、

 とうとうたらりたらりら、とうとうたらりたらりら

と、地をはう呪文のような響きのある詞が謡い出されます。

 地謡も同じように和して

 とうとうたらりたらりら

 と謡い出します。

 不思議なことに、意味のわからない、とうとうたらりたらりら、という 謡いが心地よく耳に響くのです。

 ヒシギという空気を切り裂くような、一際高い音を笛が発し、小鼔と太鼓が掛け声とともにテンポよく打ち鳴らされます。

 すると、露払い役の千歳が、

 鳴るは瀧の水 と言って立ち、 絶えずとうたり常にとうたり

 と謡い、千歳の舞を舞いはじめます。

 その舞が若者らしく颯爽としていて、その躍動する生命感に圧倒されます。

 

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”翁”の面、白式尉(はくしきじょう)
©兵頭富雄氏蔵&提供

 

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  千歳が舞っている間に、白式尉(はくしきじょう)の面をつけた翁は、

 総角(あげまき)やとんどや、と謡い出し、

 座して居たれども、と立ち上がり、 参らうれんげりやとんどや、

と前に出ます。舞台正面で翁は、

 ちはやぶる と謡い、両袖を左右に広げて扇を立て、

 およそ千年の鶴は、と謡い出し、天下泰平、国土安穏、と祈祷の詞を唱えて、翁の舞を舞いはじめます。

 翁の舞は静謐さのなかにも、おおらかさがあるように思われます。

 左右に大きく広げられた袖は天と地と人を包みこむように感じられるのです。

 

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 翁は目付柱にて天を仰ぎ、天地人の足拍子を三度踏み、脇座にても地をみる心で三度足拍子を踏みます。そのドーンという足拍子の音が、木の舞台であることもあり、心地よく胸に響きます。生命の豊穣さを寿ぐ祈りが伝わってくるようであります。

 舞の終わりに、

 千秋万歳の喜びの舞なれば一舞まはう万歳樂、と謡い、両袖を胸に合わせて拝をなし、

 万歳樂、万歳樂と謡い納めて、面をはずして箱に納め、橋懸より退いていきます。

 

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 そして狂言の三番叟の舞となります。

 直面の三番叟の揉ノ段の舞は、笛のヒシギが鳴り響き、小鼓も太鼓も激しく打ち鳴らされる力強い舞です。その所作はリズミカルで種をまいているようであります。

 その後、黒式尉(こくしきじょう)の面をつけて三番叟が舞う鈴ノ段の舞は、五穀豊穣を祈り、鈴をうち振るい、実った稲を刈り取るような所作をする独特の舞です。なお黒式尉の面をつけるのは農民の田の神を表しているという説があるそうです。

 呪術的な舞は最高潮に達し終演をむかえるのです。

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黒式尉(こくしきじょう)

 

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 先に述べましたように、能の「翁」は能にして能にあらずといわれ、能の完成する室町時代より前の猿楽のなごりを残しているといわれます。それにしても能が完成した、世阿弥の生きた室町時代は疫病や戦乱、地震や飢饉などさまざまな災禍が国中を襲った時代だったいわれます。

 わたしたちの生きている現代もコロナ禍というパンデミックに襲われ、世界も対立と分断に満ち、世界のいたるところで大災害に見舞われています。

 そう思うと、あらためて翁の舞も千歳の舞も三番叟の舞も生きとし生けるものの豊穣さを寿ぎ、祈りに満ちているように見えます。だが、果たして、そうした願いが通じるものなのか、心もとなく思うのはわたしだけでしょうか。

 わたしには、しずしずとすり足で退場していく翁の姿が、いのちある生の世界からどこか冥界に渡っていく姿に重なって見えるのです。

 果たして人間はこの地球で永久に生き残ることができるのでしょうか。遠い将来、人間が地球にすめなくなり、銀河系を渡って他の惑星を求めるようなことにならないように祈りたいものです。

 

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 能の翁とは関係ありませんが、小面が美しいので画像を掲載します。

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 〇©錦光山和雄 All Rights Reserved

 

#NOH  #OKINA  #KANZE

#能 #翁 #観世清和

 

 

 

 

 

On the Street

 

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   わたしはストリートで詩や小説を書き、エッセーも書く。

 書き終わると、春の香りのするベーコンとブロッコリーのペペロンチーノを食べ、泡の綺麗なビールを飲む。
 

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 そして時々、みずからのチカラで甘味と酸味をつくりだすという麹のはいった酒を飲む。麹の不思議なチカラを信じているからだ。

 

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サイゾーのSDGs特集:ラッパーDADA&Web3.0&バルバドスの歌姫・リアーナ

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表紙&グラビアは
グラビアアイドルの鈴木ふみ奈さん。


特集記事は、持続可能な世界をつくるというSDGs

 SDGs特集のユニクロの新疆綿問題とかスタジオジブリの作品の持続可能性など、いろいろな記事があるなかで、わたしの目を引いたのは ラッパーのDADAさんの記事。

 DADAさんは、愛が見えないから
自分の身体に5つの愛の文字をタトゥーしたという。

 DADAさんは

 何度もママが愛していると言った
 ママがお金がないと泣いている

 小さいる身体でママを抱きしめた

 という切ないリリックを哀しみを背負ったような声で歌う。

 DADAの小学校低学年ラッパーだった弟の太郎忍者も
 可愛いらしい。

 ヒップホップは不良の歌と思っていたけど、妙にこころに響く。

   それはもしかすると、時代がどんどんヒップホップの世界に引き寄せら

 れているからだろうか。

 そんなDADAのヒップホップを聴いていると、
 本当に地球は持続可能なのだろうか、と
 なぜか悲しくなってくる!

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   もう一つ興味を引いた記事が、#後藤直義 氏の#GHOST IN THE TECH である。

 この記事によると、今年もっとも注目されるテクノロジーはWeb3.0だという。

 Web3.0は、ブロックチェーン技術を応用して、自分のデータやコンテンツを所有&コントロールできるため、GAFAなどの巨大なプラットフォーマーに収益を奪われることなく、自分で稼げるという。その代表例が、アーティストたちが自らの作品のデジタル所有権をブロックチェーン上で発行できるNFT(Non-Fungible  Token)だという。大いに注目されるところである。

 次いでに言えば、丸屋九兵衛氏の記事で、バルバドスの歌姫、リアーナを紹介しているが、彼女の"Umbrella"という曲の「マイアンブレラ、レラ、エラ、エ、エ、エ」というところが新鮮で面白い。

 

youtu.be

〇©錦光山和雄 All Rights Reserved

 

鈴木ふみ奈 #サイゾー #DADA #SDGs #太郎忍者

後藤直義 #丸屋九兵衛 #リアーナ

英語読みのプロが語る 文学作品に学ぶ英語の読み方・味わい方

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 本書は、英語読みのプロ14名が、

ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』、

チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』、

バーナード・ショウのミュージカル「マイ・フェア・レディ」の原作となった『ピグマリオン』、

C・S・ルイスの『ナルニア国物語』、

ジェイン・オースティンの『高慢と偏見

 など、世界の名作の文学作品に深く切り込み、その奥深い神髄と読み方・味わい方を伝授いたします。

 社会人のみならず高校生・大学生にもお勧めの一冊です。

 

〇©錦光山和雄 All Rights Reserved

 

#おすすめの本

ベトナムの思い出

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 2015年11月1日~8日まで日本民間外交推進協会のベトナム訪問団の一員としてハノイ、ダナン、クアンガイ、クアンナム、ホーチミンを訪れ、サン国家主席を始めベトナム中央・地方政府要人と面談してきました。
 
 折から中谷防衛大臣習近平国家主席の訪越の時期と重なるなかで、ベトナムを始めとするインドシナ半島における日本、韓国、中国企業の進出状況および平均年齢28歳というベトナムの若いエネルギーを垣間見ることが出来ました。
 
 写真は文廟における女子大生の卒業記念、国家主席迎賓館、クアンナム省人民委員会との面談風景、ズンクワット経済区のペトロベトナムでの面談風景。
 
 

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〇©錦光山和雄 All Rights Reserved


 

 

 

 
 
 
 
 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 

 


 Kinko、他7人
 

LAST NIGHT IN SOHO:THE CINEMA OF SWINGING LONDON

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LAST NIGHT IN SOHO

  この映画を見ていると、最初にロンドンに行った頃のことが思い出されてきます。

  白い雲を抜けて、ヒースロー空港に向かう上空から眺めたロンドンはどこか霞がかかったような印象がありました。初めての駐在員で、まだ住む家がなかったので、しばらくグロブナーホテルに滞在してシティにある会社に通っていました。夕刻、会社からもどってくると、ソーホーの入口にあたるピカデリーサーカスのエロス像のそばでぼんやりとたたずんでいたことを思い出します。

  今となっては昔日の感がありますが、当時、ロンドンは日本企業のファイナンスの絶頂期で街中ブームに沸いていました。わたしもあちこちのホテルで開催される日本企業のファイナンスの調印式に出席していました。夜にはソーホーエリアのカラオケやディスコ、ミモザなどのクラブに顔を出したこともありました。

  少し思い出話が長くなりましたが、この映画はファションデザイナーをめざしたエロイーズという女性がロンドンに出てきて、スウィンギング・ロンドンといわれた60年代のソーホーで歌手をめざすサンディという女性と時空を超えてシンクロするという、ソーホーを舞台に現代と60年代の2つの時代が交錯するサイコスリラー映画です。いわば当時のソーホーの光と闇を描いた映画といえましょう。

  わたしは60年代のソーホーがどのように描かれているのかを見たくてこの映画を見に行きましたが、ソーホーの光と闇に彩られた喧噪が不思議なノスタルジーを喚起してくれました。

  エロイーズを演じたトーマシン・マッケンジーも素敵でしたが、サンディを演じたアニヤ・テイラー=ジョイのプレチナ・ブロンドで大きな瞳で踊る姿がとても印象的でした。

 彼女を見ていると、プラチナ・ブロンドに髪を染めて、一緒にカラオケに遊びに行った同僚のクリスティーのことが思い出されます。クリスティーは美人でしたが、お茶目でとても面白い女の子でした。彼女はスコットランド出身で、幼い頃父を亡くした話をしてくれたことが印象的です。

 わたしにとっても、この映画は現代と80年代の懐かしいロンドンを往還する不思議な映画だといえましょう。

 

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〇©錦光山和雄 All RIghts Reserved

#LASTNIGHTINSOHO  #ラストナイトインソーホー

#ANYATAYLORJOY #THOMASINMCKENZIE #EDGARWRIGHT