この映画はよくできたドラマでした。
舞台は、文化7年1月16日、木挽町の歌舞伎の芝居小屋森田座の仮名手本忠臣蔵の千穐楽の夜にはじまります。雪の降りしきるなか、芝居を見終えて、色とりどりの蛇の目傘をさして客が、森田座を出て行くと、悪どい顔をした与太者の作兵衛(北村一輝)が、緋色の振袖を身にまとった若い娘に声をかけ、帯に手をかけます。
娘は黙って立ち去ろうして、帯がほどけて、緋色の振袖が脱ぎ捨てられます。すると、白装束の凛々しい若者が立ち現れ、作兵衛に向かって、われこそは美濃遠山藩士、伊納清左衛門の一子、菊之助(長尾謙杜)と名乗り、親の仇だ、尋常に勝負せよ、とあだ討ちを宣言するのです。作兵衛は菊之助の父を殺した男だったのです。それを見ていた群衆は大きくどよめきます。
そして、菊之助と作兵衛の死闘が展開されて、双方、傷つき血だらけになりながら、菊之助は作兵衛に首を絞められ、炭置き小屋に投げ飛ばされてしまいます。群衆がかたずん飲んで見守っていますと、作兵衛の断末魔の悲鳴が聞こえ、菊之助が作兵衛の血がしたたる首を持って立ち現れるのです。見事に親の仇を討ったのです。
それから1年半後、遠山藩の浪人だとという加瀬総一郎(柄本佑)という男が森田座を訪れて、木戸芸者の一八や殺陣師や女形や小道具方などから、菊之助のあだ討ちの顛末を聞き出そうとするのです。昔は芝居小屋というのは、はみ出し者が集まる悪所だったようで、個性的面々が顔を揃えているのです。
最初は、総一郎がなんでいまさら、そんなことを聞き出そうするのか分からないのですが、森田座の戯作者、篠田金治(渡辺謙)が現れて、次第にことの真相が明らかになっていくのです。そこが、この映画の一番面白いところであり、肝なのですが、ネタバレになるの触れませが、どんでん返しがあることだけは言っておきます。
また、堂々と親の仇を討ちとった菊之助のいじらしい本音や極悪非道の作兵衛の意外な一面も涙を誘うところです。さらに、菊之助の母たえ(沢口靖子)が、あだ討ちなどはくだらない武士の掟、あだ討ちなどしなくていいのです、という、凛とした姿に心が動きました。
最後に、渡辺謙が演じる森田座の戯作者、金治が、「木挽町の徒討ち」という戯作の冊子を総一郎になげてよこします。総一郎が、あだ討ちの字が徒討ちになって間違っているというと、金治は、それでいいんだよ、あだ討ちというのは、あだ花だからなと言って、菊之助のあだ討ちが、金治のしかけた大芝居だったことが明らかにされます。
またこの映画では、縦社会の武士のしがらみに生き苦しむ人々と悪所といわれながら身分の差のない芝居小屋の人々の対比も描かれていて、それが粋でスカっとします。
見事なエンディングといえましょう。
監督は源孝志、原作は永井紗耶子だそうです。
○©錦光山和雄 All Rights Reserved
著書:「京都粟田焼窯元 錦光山宗兵衛伝 世界に雄飛した京薩摩の光芒を求めて」「粟田、色絵恋模様」
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