芥川賞を受賞した畠山丑雄の「叫び」を読みました。読んでみて、この作者の時空を結びつける構想力と筆力には確かなものがあると思いました。
それは、ひとつには、大阪の茨木市の郷土史を深掘りすることによって、大阪万博の大屋根リングの会場と戦時中の満州の白いケシの花が咲く大平原および阿片窟を結びつけてしまうという力量です。
大阪万博と言えば、ついこのあいだのことであり、大屋根リングもずいぶん報道されましたが、話題のキャラクター、ミャクミャクも出てきて少し笑えました。
さらに、時間を超えて、作者は、最近の大阪万博と1940年に開催されるはずだった万博とを結びつけるのです。主人公の早野が、大阪万博の会場を歩いていると、満州でケシの花を栽培していた川又青年があらわれ、また1940年万博の目玉となるはずだった荘厳な建物が立ち現れるのです。
これらの時空を超えて結びつけるきっかけになったのが、主人公の早野が、夜、街を歩いていると、鐘の音が聞こえてきて、その鐘の音に誘われて行ってみると、穴のなかに怪しげな男がいるのです。その男が銅鐸を作っていて、いつのまにか、言いたい放題を言っているようなその男を師と仰ぐようになるという、かなり荒唐無稽な展開も面白いのではないかと思われます。
また、しおりという、曰くありげな女性が出てきて、その女性がもしかしたら聖(ひじり)でないかと思わせるところや、すこしじれったいところも彩をそえています。
わたしは純文学というものが、どういうものかよく分からないのですが、選評のなかで作家の小川洋子が「銅鐸は単なる遺物ではない。・・・無数の叫びの隠れ場所である。銅鐸と肉体の境目が溶ける時、時空にぽつんと浮かぶ、小さな自分を慈しむことができる。何と包容力のある作品だろう」と書いています。
もし、この小説のタイトル「叫び」が小川洋子が言うように、銅鐸に秘められた無数の叫びをあらわすものならば、歴史のなかで蹂躙された人々の声、叫びをあらわす、
秀逸な題名と言えるのではないでしょうか。
○©錦光山和雄 All Rights Reserved
著書「京都粟田焼窯元錦光山宗兵衛伝 世界に雄飛した京薩摩の光芒を求めて」
「粟田、色絵恋模様 京都粟田焼窯元錦光山宗兵衛外伝」
著書「京都粟田焼窯元錦光山宗兵衛伝 世界に雄飛した京薩摩の光芒を求めて」「粟田、色絵恋模様 京都粟田焼窯元錦光山宗兵衛外伝」
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