錦光山和雄の「粟田焼&京薩摩」Blog

京都粟田窯元で「京薩摩」の最大の窯元であった錦光山宗兵衛の孫によ

世界を驚かせたジャポニスム

  わたしはジャポニスムには特別な思い入れがあります。
  というのも、わたしの曾祖父で京都最大の窯元であり、将軍家御用御茶碗師であった六代錦光山宗兵衛が、東京遷都で大口需要家が東京に移ってしまい衰微する京都にあって輸出に活路を求め、折からのジャポニスムによって京薩摩といわれる陶器の輸出が急増し、未曽有の活況を呈し、京都の経済を救ったことがあったからです。それでジャポニスムさまさまなのです。

 そんなこともあって、NHKの「歴史探偵 ゴッホもマネも! ジャポニスム 花のパリの生活スタイル変えた日本文化とは」を大変興味深く見ました。
 それによりますと、ジャポニスムのきっかけは慶応3年(1867)のパリ万博であったようです。

 

©NHK「歴史探偵 ゴッホもマネも! ジャポニスム 花のパリの生活スタイル変えた日本文化とは」


 万博でパリの人々は、浮世絵や日本の着物、鎧兜などファンタジーで奇想天外な日本美術を見て驚き一目でその虜になってしまったそうです。そして富裕層はそれまでルネッサンス以降何世紀もヨーロッパの伝統に縛られて、軸に沿って左右対称の堅苦しい室内装飾をしていたそうですが、人々はそうした伝統に縛られずにガラッと変え、自分の個人的な趣味で日本美術品を自由に選んでアレンジし、ゆっくりとしたリラックスした空間に変えていったそうです。

 

©NHK「歴史探偵 ゴッホもマネも! ジャポニスム 花のパリの生活スタイル変えた日本文化とは」


 この当時、日本美術品を一番集めたのは富裕層、とりわけご婦人方であったようですが、そこまで資力のない、一般民衆は手軽で安い、浮世絵のウチワを買い求め、それを壁に左右対称ではなく「散らし」方式で貼りつけ楽しんだようです。ウチワは年間50万個も輸入されたそうです。その人気ぶりからウチワの裏側にはフランスの広告も貼られていたそうです。

 

©NHK「歴史探偵 ゴッホもマネも! ジャポニスム 花のパリの生活スタイル変えた日本文化とは」

©NHK「歴史探偵 ゴッホもマネも! ジャポニスム 花のパリの生活スタイル変えた日本文化とは」


 また着物も「楽でええわ」と室内着として女性におおいにもてはやされたようです。 

 

©NHK「歴史探偵 ゴッホもマネも! ジャポニスム 花のパリの生活スタイル変えた日本文化とは」


 また皿にも葛飾北斎の絵がもちいられるなど、日本の美術工芸がフランスの生活スタイルのなかにふかく浸透していった、ひとつの文化革命のようなことが起こったようです。

 

©NHK「歴史探偵 ゴッホもマネも! ジャポニスム 花のパリの生活スタイル変えた日本文化とは」


 こうして日本の浮世絵や着物や陶磁器などがヨーロッパで大人気になったのですが、それに刺激を受けて新しい西洋文化が広がったといいます。その代表者が印象派の巨匠ゴッホとマネです。


 ゴッホ歌川広重の「亀戸梅屋敷」を模写し、その梅の構図を「種まく人」で利用しただけでなく浮世絵にふかく傾倒し、またマネも「ラ・ジャポネーゼ」に見られるように浮世絵を研究し、日本の太鼓橋やしだれ柳もある睡蓮の庭をつくり、一連の「睡蓮」の絵を描いていくことになったのです。

 

©NHK「歴史探偵 ゴッホもマネも! ジャポニスム 花のパリの生活スタイル変えた日本文化とは」

©NHK「歴史探偵 ゴッホもマネも! ジャポニスム 花のパリの生活スタイル変えた日本文化とは」

©NHK「歴史探偵 ゴッホもマネも! ジャポニスム 花のパリの生活スタイル変えた日本文化とは」


  このようにしてジャポニスムは、フランスだけでなくイギリス、オランダ、ベルギー、北欧、東欧、ロシア、アメリカへの広がり、1860年代後半から1910年代後半にかけて約50年間続いたそうです。
 とりわけ明治11年(1878)の第三回パリ万博が絶頂期であり、ご参考までに拙著「京都粟田焼窯元 錦光山宗兵衛伝 世界に雄飛した京薩摩の光芒を求めて」の該当箇所をアップさせていただきます。

 


 最後に一言申し上げますと、現在、日本のアニメ、漫画が世界で大人気になっていますが、これは新ジャポニスムといわれているそうです。NHK大河ドラマの「べらぼう」の蔦重屋重三郎の黄表紙ではありませんが、江戸時代から今日まで、日本人の感性には、世の中のことを笑い飛ばし、世界を驚かすような批評性に富んだ諧謔やファンタジー性、奇想天外性があるのかもしれません。
そうであるとしたら、日本のクリエイティブの力を発揮して、これからも世界を驚かせていくことを期待したいものです。

 

 

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