NHKの新番組、「タモリ・中山晋弥の⁉︎(びっくりはてな)A Iは人間を超えるか」を見ました。
それによりますと、A Iが進化したのは、大規模言語モデルで半端ない、1兆とかそのくらい膨大な言葉を覚えたことにより、次の言葉を予測できる能力が向上したことによると言います。
例えば、M Cのひとりである吉岡里帆に対して、「私は役者である。あなたは?実は私も()です」という文章の()のなかにどんな単語が入るのかという質問に対して吉岡は(役者)ですと答えたのですが、A Iも役者と答えたのです。
A I研究者で東京大学大学院の松尾豊教授は、A Iが進化してきたのは、ただ次の言葉を予測する能力が向上してきたためであり、知能=予測能力だと言います。
松尾教授によりますと、A Iは背景にある文脈や人の心の動きまで膨大な言葉の学習とシュミレーションによってできるようになったと言うのです。言葉を学んだだけでA Iは他者の心を読むことができるようになった、言い換えれば、言葉があるから人間の感情が明確になり、言葉が「心」を生んだとも言えるというのです。
言葉とはなんと素晴らしいものでしょうか。
ところで、イギリスのコーンウォールにあるエンジニアード・アーツ社にAmeca(アメカ)という人間の動きや表情まで超リアルな対話型A Iがあると言うのです。Amecaにどんな音楽が好きですかと聞くと、なんと日本語で米津玄師の曲も大好きですと答えるのです。

©NHK「タモリ・山中伸弥の⁉(びっくりはてな)
ただAmecaといえども風が吹いたときに風を感じることはできずに、またリンゴをかじってときの味覚はわからないと言います。つまりAmecaには身体性がなく体験ができないと言うのです。
人間は胎児のときから子宮のなかで体を動かすことによって脳の神経を刺激して知能を育んできたがA Iにはそれができないと言うのです。
しかし、松尾教授は、人間の知能は生きるために身体性が重要であったが、A Iは人間とは違う形で進化していくので、A Iに身体性がなくても膨大なデータがあれば進化は可能だと言います。言葉の予測能力があればAIでも創造性を獲得できると言うのです。
ただ人間の脳は、1000億個の神経細胞と1000兆個のシナプスがつながるネットワークから成り立っていて、初めてのどんな状況でも対応できるそうですが、A Iは初めての状況には対応できないそうです。また人間の脳は20ワットくらいのエネルギー消費ですみますが、A Iは大都会の電力くらいのエネルギーを消費し、熱効率がわるいと言います。そこで、これからは生命進化の結晶である人間の知能=脳とコンピュータを組み合わせて熱効率を高めながらAGI、汎用人工知能に向けて研究が進んでいくだろうということでした。
松尾教授によれば、知能を解き明かすことは、生命を解き明かすことより難しくないので、そうしたAGIは今後5年から10年後にはできているだろうと言うのです。また、無意識の物質から意識もつくり出されるだろうと言うのです。
まさにびっくりはてなではないでしょうか。
いずれにしましても、 知能とは言葉の予測能力だということに感銘を受けていると、同じ日の7月12日の日経新聞夕刊に「人が言葉を操れるのはなぜ?」という記事が掲載されていました。その記事によると、米国の言語学者のチョムスキーが「人間の脳には言葉を組み立てる機能がもともて備わっている可能性がある」と書かれていました。
やはりA Iの発展とともに、知能、言葉、言語学とはどのようなかかわりがあるのか益々興味が湧いてきます。
なお、ご案内になって恐縮ですが、チョムスキーの生成文法にご興味があれば、高橋将一著「データとともに学ぶ生成文法の基礎」(2025年6月刊)をお薦めいたします。人間の言語の本質的性質を平易に説いた、初学者および研究者にとっての最適な生成文法の教科書的な内容です。
ご興味ありましたらよろしくお願いします。