錦光山和雄の「粟田焼&京薩摩」Blog

京都粟田窯元で「京薩摩」の最大の窯元であった錦光山宗兵衛の孫によ

メイ・ディセンバー ゆれる真実

 この映画は、グレイシーという36歳の既婚女性が12歳の中学1年生のジョーとペットショップの倉庫で情事におよび、警察に逮捕され、獄中で子供を出産、出所後、夫と離婚したグレイシーはジョーと結婚という、実際あったスキャンダラスな実話をもとにしているという。
 ちなみに、題名のメイ・ディセンバーとは、親子ほど年の離れたカップルを指す言葉だそうだ。

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グレイシージュリアン・ムーア


 事件から24年の歳月が流れ、アメリカ南部のジョージア州の美しい港町サバンナに、この実話を映画にするために、女優のエリザベスがやって来て、初老になっているグレイシー、まだ36歳のジョーをはじめ周辺の関係者に取材をしていく。

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エリザベス(ナタリー・ポートマン

 この映画がどこか奇妙に感じられるのは、いまは美しい港町で、息子と二人の娘を育て、平穏に暮らしているように見えるグレイシー一家が、エリザベスがいくら取材をしていっても、24年前に、なんでそんなスキャンダラスな事件が起こったのかよくわからないことだ。
 グレイシーは、二人は愛しあっていたというが、その一方でジョーが誘惑したようなこともいう。ジョーはあまり多くを語ろうとせずに、どこか憂鬱な表情を浮かべている。また周囲の人々もこのスキャンダラスな事件にいまだ不快感を持っているのか、許容しているかもあいまいなままなのだ。
 こう見てくると、この映画から伝わってくるのは、人間の愛や欲望、人生に横たわる真実というものは、そんな簡単にとらえられないという、逆にいえば、人間というのは一面的にとらえなれない不可思議さを抱えた存在ということであろうか。
 この映画では、寡黙なジョーが、アゲハチョウの卵からサナギ、さらに成虫まで飼育する場面が繰り返し流される。
 それはなぜなのか。もしかすると、不気味にまた少し奇怪にその姿を変えていく、そのアゲハチョウこそが、とらえどころのない人間の不可思議さをあらわすメタファーになっているのかもしれない。

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