錦光山和雄の「粟田焼&京薩摩」Blog

京都粟田窯元で「京薩摩」の最大の窯元であった錦光山宗兵衛の孫によ

本日、日経新聞朝刊「世界を魅了 明治の焼き物 十選」に錦光山宗兵衛作品が掲載

f:id:woodsidepark60:20210719122843j:plain

  明治・大正時代、直径28センチ、京都国立近代美術館

 

 本日、2021年7月19日の日経新聞朝刊最終面、

「世界を魅了 明治の焼き物 十選」に、

 わたしの祖父七代錦光山宗兵衛作「花蝶図大八」が掲載されました。

 その記事のなかで、美術史家の森谷美保さまは

「たっぷりとした鉢の見込みと周囲には、牡丹や菊など色とりどりの花が隙間なく描かれている。その中で数羽の蝶が愛らしく舞い、口縁の金彩が華やかさを演出している。製作者の錦光山宗兵衛は、京都の粟田口で代々窯業を営む家の七代目。錦光山家が輸出品制作に目を向けたのは、幕末、六代目の時代であった。窯を訪ねた外国人の様子を見て、彼らが好む製品の制作を志したのだという。そして完成したのが、精緻な薩摩焼を模した『京薩摩』の製品だった」と述べておられる。

 さらに森谷美保さまは

「『本薩摩』が不振となる中、それに代わって台頭したのが、錦光山の『京薩摩』だった。薩摩焼の単なる模倣にとどまらない、錦光山家に連綿と伝わる京都の伝統、美意識を表出した作品は、外国人を魅了した。現代では再現不可能とされる細密描写は、超絶技巧という言葉だけでは言い表せない、技術と芸術が融合した作品といえるだろう」と述べておられる。

 さすがに、森谷美保さまは美術史家だけあって、錦光山窯の成り立ちの経緯および「京薩摩」を簡潔に述べておられるだけでなく、その美の本質を適確に捉えてられていて、深く敬意をささげます。

 また、前回の「世界を魅了 明治の焼き物 十選」では、錦光山窯の絵師を指導するために錦光山宗兵衛が招聘した春名繫春の「色絵金彩飛龍文大香炉」が紹介され、また春名繫春が「京都の錦光山宗兵衛の仕事にも関わったという」という形で錦光山宗兵衛の名が出ていたこともあり、もしかしたら錦光山宗兵衛の作品は紹介されないかもしれないと思っていただけに、日経新聞社および森谷美保さまに感謝したいと思います。錦光山宗兵衛作品をご紹介いただきまして、どうも有難うございます。

 また今回、錦光山宗兵衛の作品として「花蝶図大鉢」が紹介されたわけですが、これは「花尽くし」シリーズのひとつであります。「花尽くし」の作品が、なぜ、これほど人々の心を魅了するのかと考えてみますと、四季折々の花が人の心に深くむすびついているからではないでしょうか。人々はなにかにつけて花に心を寄せてきた、そんな心情が「花尽くし」の作品に心惹かれるのではないかと思われます。そして花はやがて散ります。そのはかない、無常ともいうべき、一瞬が、「花蝶図大鉢」にはいまが盛りと華麗に描かれています。その命に対する哀惜の情が、いわば幽玄という優美さが、一層この作品の魅力を高めているのではないかと思われます。

 

 ところで、わたしに錦光山宗兵衛の作品のなかで今回の「花蝶図大鉢」をはじめとしまして「花尽くし」の魅力を気づかせてくれたのは元大学院生の原あゆみさんであります。彼女が修論で錦光山宗兵衛の「花尽くし」の作品を取り上げてくれて、いろいろお手伝いしているうちに、わたしも「花尽くし」の作品の魅力に気づいたのです。

 あらためて彼女の先見の明に敬意と感謝の意をあらわしたいと思います。

 

f:id:woodsidepark60:20210719192516j:plain

 

f:id:woodsidepark60:20210725122658j:plain

 #日経新聞 #世界を魅了明治の焼き物

 #森谷美保

 #京薩摩 #SATSUMA