LOVE IS IN THE ATR
横浜で開催されている「バンクシー展 天才か反逆者か」を見てきました。
私はバンクシーというのは、街角の壁に落書きを描く、サブカル的でパンクなスト
リート・アーティストかと思っていましたので、彼がスタジオでいろいろな材料を使っ
て作品を作っていることを知り驚きました。
BANSY STUDIO
なぜ、バンクシーが世界中から注目され話題になるのか疑問に思っていましたが、今
回展覧会を見て、彼の作品が政治や戦争や暴力などの、私たちが関心を持つ世界の出来
事を取り上げて、シンプルでわかりやすく、皮肉とユーモアに満ちた、とてもストレー
トなメッセージをふくんでおり、それが世界の人々の心を捉えたからではないかと思
いました。
バンクシーのメッセージは、ウイットに富んで面白いのですが、皮肉に満ちていて、
とても強烈です。その痛烈な風刺は消費主義や英国政治・王室に対しても向けられてい
ます。そのアンチ消費主義の象徴のひとつが、空から墜落する少女が手にする、どこの
スーパーにでも置いてある買い物カゴなのかもしれません。またキリストが持つ買い物
バッグもフラッグのパンツもユーモアに満ちています。
TROLLEYS
CHRIST WITH SHOPPING BAGS
PANTS
またイギリスの誇る英国議会や王室に対しましても、モンキー・クイーンやモン
キー・パーラメント、クイーン・ヴィクなど痛烈な風刺で容赦がありません。ただ、そ
こには、わたしが好きな、少しシニカルで諧謔で笑い飛ばす、おおらかで懐の深い英国
気質もまたあふれているように思われます。
MONKEY QUEEN
MONKEY PARLIAMENT
QUEEN VIC
さらに見ていきますと、バンクシーの本領は、戦争や暴力、それに対する抗議にある
ように思われます。ポリスや軍隊を描いた作品も多く、そこには全米オープンテニスで
優勝した大阪なおみが「私はアスリートである前に黒人女性です」と語った姿勢と共通
しているものを感じました。
そして政治と抗議のその象徴的な作品が、石の代わりに花束を投げる若者を描いた作
品、LOVE IS IN THE AIRなのかもしれません。その花束は世界の人々の心にもっとも大
きな爆発を起こしたのかもしれません。
さらには、爆弾を抱く少女、ミッキーマウスとベトナム戦争の裸の少女、リボンを結
んだ軍用ヘリなど、組み合わせがなんとも絶妙で、その抗議の高まりをユーモアで包み
こみでいます。
BONB LOVE
NAPALM
HAPPY CHOPPERS
またサザビーズのオークションで1億5千万円で落札された瞬間にシュレッダーで裁
断された「GIRL WITH BALLOON」、なぜバンクシーがそのようなことを仕掛けたのか
わからないですが、世界中の多くの人々の記憶に刻み込まれたことは間違いないでしょ
う。余白たっぷりの白地に赤い風船、陰翳の濃い可憐の少女、この構図は秀逸ではない
でしょうか。
GIRL WITH BALLOON
この「GIRL WITH BALLOON」は2014年3月に「#WithSyria」と書き加えてネルソ
ン記念柱に投影されたそうです。正体不明の謎の人物、バンクシーはどうやらイギリ
スの港町ブリストル出身のようですが、彼のグラフィティ・落書きは、風雨に曝されて
消えたり、剥ぎ取られたり、消されたりする運命にあるようです。でも、なぜバンク
シーは落書きを描き続けているのでしょうか。その真意はわかりません。
でも、もしかしたら、世の中にはフェイク情報があふれ、またそうでなくても、これ
までの慣習によって頭に刷り込まれた情報で動いている私たちにたいして、
もう一度立ち止まって、自分の目で見てほしい、
というバンクシーのメッセージが込められているのではないか、という気がしました。
それは分断やポピュリズム、さらにはパンデミックや森林火災など、地球の将来が
ユートピアではなくディストピアになってしまう不安のなかでアートにメッセージ性が
強く求められるようになった、悲しい時代を反映しているのかもしれません。
(RAT)
WELCOME TO HELL !
NO BALL GAMES
©錦光山和雄AllRIGHTSRESERVED
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