色絵菊花文透彫花瓶 七代錦光山宗兵衛 アシュモレアン博物館蔵
Art Nouveau style vase with chrysanthemum Kinkozan SobeiⅦ
Ashmolean Museum 、University of Oxford
皆様、新春をお慶び申し上げます。
今回、第五回内国勧業博覧会、日英博覧会に続きまして明治37年(1904)に開催されましたセントルイス万博の錦光山宗兵衛作品に触れてみたいと思います。
宗兵衛は、セントルイス万博で釉下彩の作品を中心に48点を出品し、503ドルの売上を得ていますが、同展で京都サロンが設けられことになり、そのでき具合を検分するために同展を視察しています。
清水三年坂美術館「SATSUMA」の『錦光山宗兵衛ー京薩摩の立役者』のなかで現・北野天満宮宝物殿室長の松原史さまは「七代錦光山、セントルイス博覧会に出品し大賞を受賞。商標には1200人の職人と50人のデザイナーを要する日本で一番大きな陶器の工房兼輸出業者であると記述されている。博覧会終了後はそのまま米国視察をして帰国」と書かれています。
今回、美術商の「ギャラリー史」の高橋親史さまが、セントルイス万博の錦光山作品の写真を送ってくださり、宗兵衛がどのような作品を出品したのかその一端がわかりましたので感謝いたします。
下の写真にありますように、ひとつは八手の葉を器面に巻いた「陶器 花瓶 金剛拳」です。もうひとつは「陶器 花瓶 梅切透」です。
なお、明治36年(1903)開催の第五回内国勧業博覧会でも宗兵衛はアールヌーヴォー調の「棕梠葉切透」や「桐花葵切透」を作っていましたので、1900年のパリ万博以降、アールヌーヴォー調の切透物を精力的に製作していたものと思われます。
陶器 花瓶 金剛拳 七代錦光山宗兵衛
Flower Vase, Pottery Kinkozan SobeiⅦ
陶器 花瓶 梅切透 七代錦光山宗兵衛
Flower Vase、of Plum-tree pattern、 Pottery Kinkozan SobeiⅦ
両画像とも白黒で鮮明ではないので、「透かし彫り」がどのようなものか鮮明なイメージが湧くように、ご参考までに、冒頭の写真にありますようにオックスフォード大学のアシュモレアン博物館の「色絵菊花文透彫花瓶」をご覧いただきたいと思います。
もうひとつの「梅切透」につきましては宗兵衛の作品ではありませんが、下の写真にありますように初代諏訪蘇山作の「釉下梅透彫花瓶」をご覧いただきたいと思います。
初代諏訪蘇山は明治33年から錦光山工場の改良方顧問をしておりましたので、パリ万博視察でアール・ヌーヴォーに衝撃を受けた宗兵衛が改良方顧問の初代諏訪蘇山とともにアールヌーヴォー調の透彫作品を製作していたと推察され、同じような作風であると思われます。なお、初代諏訪蘇山は明治39年に錦光山を辞し五条坂で製陶業を始め、後に帝室技芸員に選ばれるのですが、四代諏訪蘇山の諏訪公紀さまにお会いした際に、初代諏訪蘇山はたとえどんなに貧乏しようとも「職人は筆とヘラさえあれば食うに困ることはなし」と言っていたという話を伺って、初代諏訪蘇山の古武士然とした潔さに感服した記憶があります。
釉下彩梅透彫花瓶 初代諏訪蘇山
Vase with Plum-tree pattern Suwa SozanⅠ
次に下の写真にありますように「陶器 花瓶 菊花窯変」です。この時期にやはりパリ万博で衝撃を受けた釉薬技法の「窯変」が出来ていたという確証になる作品かと思われます。
陶器 花瓶 菊花窯変 七代錦光山宗兵衛
Flower Vase, of Chrysanthemum pattern Pottery Kinkozan SobeiⅦ
最後に敬愛する大阪歴史博物館の中野朋子さまに送っていただいた明治37年発行の大日本圖按協会の雑誌「圖按」22号と24号によりますと、セントルイス万博で京都の出品数が多数を占めたのは「工業学校と実業界との接近と陶器試験場の効果」であり、錦光山宗兵衛の作品では八手切透の「金剛拳」を「甚だ佳なり」とほめていますが「梅切透」は「感服せず」と書かれています。
聖博出品美術工芸品品評 「圖按」第24号
新年も可能なかぎりワンダーランドとなってしまった錦光山宗兵衛の世界を巡る旅を続けたいと思いますので、皆様、よろしくお願いいたします。
(ご参考)
紅葉図花瓶 七代錦光山宗兵衛
Vase Kinkozan SobeiⅦ
©錦光山和雄AIIRIGHTSRESERED
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