錦光山和雄の「粟田焼&京薩摩」Blog

京都粟田窯元で「京薩摩」の最大の窯元であった錦光山宗兵衛の孫によ

木版画家・斎藤清(Kiyoshi Saito)-「会津の冬」シリーズと西川潤先生

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 最初に斎藤清の名前を聞いたのは恩師の西川潤先生からでした。

2018年6月21日に西川潤先生のご自宅に先生のお父様であり、会津出身の詩人で作家の西川満先生の資料をもらいに伺ったときに、斎藤清という方は、「会津の冬」シリーズで有名な木版画家です、と西川先生がおっしゃったのです。

 その後、お父様の西川満先生の展覧会「台湾と会津 西川満から現在まで」が会津若松で開かれることになり、西川潤先生がフォーラムにご出席になるので、わたしも2018年7月22日に会津若松に向かいました。

 その日、会津若松駅に着いたわたしは、駅員に「柳津(やないづ)までどう行けばいいのですか」と尋ねました。と言いますのも、柳津にある「斎藤清美術館」で「台湾コネクション 版画/蔵書票がつないだ「台湾×斎藤清」が開催されるので行くかどうか、迷っていたのです。

 駅員は行き方を教えてくれたのですが、会津若松にもどってくる電車が少なく西川潤先生のフォーラムに間に合わないので、残念ながら柳津の「斎藤清美術館」に行くのを諦めて、会津若松の「西川満展」に出席したのです。このため、わたしは斎藤清木版画を見る機会を逸してしまいました。ただ、後に聞いた話では、台湾文学発展のために尽くされた西川満先生のご縁か、奥深い会津の柳津まで訪れる台湾の人々が多いということです。

 なお、蔵書票とは聞きなれない言葉ですが、「斎藤清美術館」の案内によると「蔵書票とは、ヨーロッパで誕生した、本の所有者を示すために表紙裏などに貼赴する紙片のことです。…その美しさは紙の宝石と称され、世界中に愛好家がいるほどです。…日本の蔵書票は、会津若松市出身の文学者西川満(1908-99)により台湾にもたらされ、ここでも数多くの美しい蔵書票が生み出されることになります。台湾での蔵書票ブームのきっかけを作った西川は、台湾文学の発展にも大きく貢献した人物として、今も敬愛されている日本人の一人となりました。本展は、そんな台湾と日本の交流が育んだ両国の美しい蔵書票の数々に加え、知られざる斎藤清の蔵書票を紹介するものです」とあります。

The Symposium of Nisikawa Mituru in Aizuwakamatu

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 そんなことがあって、わたしは斎藤清のことが気にかかっておりました。そんなある日の12月11日のことです。ウズベキスタン大使館に行った帰り、偶然にも渋谷ヒカリエ斎藤清の「TOLMAN COLLECTION」が開かれていることを知りました。

 急遽、予定を変更して寄ってみることにしました。そこで初めて斎藤清の実物の木版画の「会津の冬」シリーズの何枚かとその他の作品を眼にすることができました。

 斎藤清木版画は思っていたよりも全般にモダンな感じを受けましたが、深い雪に閉ざされた会津の冬を描いた「会津の冬」シリーズは印象深いものでした。なかでも、今にも雪に埋もれてしまいそうな家を描いた一枚は、雪の冷たさよりも真綿のような温かさを感じさせてくれる不思議な木版画であり、斎藤清の人柄がにじみでているようで大好きになりました。

  「会津の冬」シリーズにちなんで、ここに西川潤先生のお父様・西川満先生の詩を掲げさせていただきたいと思います。

 雪女

 そのひとのいるところだけ

 雪がふり

 そのひとの歩むところだけ

 雪がふり

 亡き母に似たそのひとの

 面影白く雪がふり

 どんより曇った空の下

 ひとすじの道 雪ふつも

 る

 

 Kiyosi Saito(1907-1997)

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 The winter in Aizu by Kiyosi Saito

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Kiyosi sato

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 最後に悲しいお知らせをしなければなりません。

 西川潤先生は、名著「飢えの構造(ダイヤモンド社、1974年)」「新・世界経済入門(岩波書店、2004年)などの著作があり、近年でも「共生主義宣言(コモンズ、2017年)」「2030年 未来の選択(日本経済新聞出版、2018年)などの著作あります高名な経済学者であります。

 西川潤先生が、2018年10月2日、国際フォーラムに参加されるために訪れていたスペイン・ビルバオ市で急逝されたのです。昨年7月の会津若松市の「西川満展」でもお元気に講演されておられたので突然の訃報に驚きました。それにしましても、西川潤先生のご自宅を伺ったのは先生が急逝される103日前、会津若松の「西川満展」で先生がご講演されたのが72日前、もしその機会を逸しておれば西川満先生のお話を伺うことはできなかったはずです。人の縁の不思議さに想いをはせるとともに、西川潤先生に生前に賜りましたご恩を想うと感謝の言葉もございません。ご自宅にお伺いした際の笑顔の素敵な先生のお写真をここに掲げさせていただきたいと思います。

 心より西川潤先生のご冥福をお祈りいたします。

  Jun Nishikawa

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